所得の種類
まず、所得は10種類に分類されます。
①利子所得 ②配当所得 ③不動産所得 ④事業所得 ⑤給与所得
⑥退職所得 ⑦山林所得 ⑧譲渡所得 ⑨一時所得 ⑩雑所得
各所得をそれぞれ計算し、原則として合算されて課税されます(総合課税といいます)
しかしこのうち一部の所得は、ほかの所得と分離して個別に課税されるものもあります(分離課税)
分離課税のうち、自分で税額を申告するものが申告分離課税
税額が天引きされるのが源泉分離課税になります。
これらを頭に入れて、今回は ①利子所得 と ②配当所得 を詳しくみていきます。
①利子所得
利子所得とは、預貯金や公社債の利子などによる所得のことです。
- 預貯金の利子
- 公社債の利子(特定公社債)
- 公社債投資信託の収益分配金(公募公社債投資信託)など
金銭の貸し付けによる利子は、雑所得または事業所得になります
(例)友人・知人に貸した ➡️ 雑所得
金融業者として貸した ➡️ 事業所得
利子所得の計算
利子所得 = 収入金額(税引前の金額)
後述しますが、原則として源泉徴収されるので 手取額 + 源泉徴収額 が収入金額になります。
課税方法
▶︎預貯金の利子 【源泉分離課税】
利子を受け取るときに20.315%が源泉徴収されて納税が完結します。
確定申告の必要はありません。
20.315% = 所得税15% + 住民税5% + 復興特別所得税0.315%
▶︎公社債の利子・公社債投資信託の収益分配金 【申告分離課税または申告不要】
20.315%の源泉徴収後、
①源泉分離課税による確定申告不要(納税完結)
②申告分離課税による確定申告
を選択できます。
預貯金の利子と同様に、源泉分離課税を選択すれば確定申告は不要です。
特定口座(源泉徴収あり)で債券等を保有しているならば、特に何もしないで納税は完結します。
申告分離課税で確定申告するケースは、損益通算や繰越控除をするときになります。
ざっくりいうと、株の売買益などの譲渡所得で損失が出たときに、利益のある所得と相殺することです。
相殺することで課税所得金額を減らして税金を抑えることができます。
ちなみに利子所得は総合課税に分類されますが、実際には限られたケースでしか対象になりません。
②配当所得
配当所得とは、
- 株式配当金
- 投資信託の収益分配金(公社債投資信託を除く)
などによる所得をいいます。
配当所得の計算
配当所得 = 収入金額 ー 元本取得に要した負債利子
株式等を取得する際に借入金があった場合、その借入金にかかる利子(負債利子)を収入金額から差し引くことができます。
課税方法
配当所得は原則として総合課税になりますが、他の課税方法を選択することもできます。
保有する株式等が上場しているかいないかで、選択肢は違ってきます。
▶︎上場株式等の場合
上場株式等とは、上場株式、上場投資信託(ETF、J-REIT)、株式投資信託などをいいます。
原則として配当を受け取る時に、20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)が源泉徴収されます。
その上で、以下から選択します。
選択肢① 総合課税で確定申告
- 配当控除の適用が受けられる
- 損益通算できない
選択肢② 申告分離課税で確定申告
- 配当控除の適用は受けられない
- 損益通算できる
選択肢③ 源泉分離課税として申告不要
- 配当控除の適用は受けられない
- 損益通算できない
それぞれメリット・デメリットあるけど、どれを選べばいいの?
サラリーマンの場合は、年末調整があるのでわざわざ確定申告するのは手間ですし、ほとんどの人が特定口座(源泉徴収あり)で株式等を保有しているでしょうから、特に何もなければ申告不要でいいと思います。
手間を惜しまず最大限に税金を抑えたい場合、課税所得金額が900万円以下の人ならば
所得税:総合課税
配当控除の適用で税率を 15% ⇒ 0%〜13%(課税所得金額による)に抑えられる。
課税所得金額 〜330万円:0%
〜695万円:10%
〜900万円:13%
※わかりやすくするため復興特別所得税は省略
住民税:申告不要
住民税は逆に総合課税にすると税率が不利になってしまうので、申告不要にする。
よって源泉徴収による5%
をそれぞれ選択するのが税率面で最も有利な節税になります。
源泉徴収20%が、5%もしくは15%もしくは18%に抑えられます。
ただし所得税と住民税で異なる課税方式を選択するには、確定申告とは別に住民税の申告が必要になってきます。
節税できるのは嬉しいけど…
せめて確定申告だけで済ませたい人は、
課税所得金額が695万円以下ならば、所得税、住民税ともに総合課税で確定申告すれば、住民税が不利にはなるけれども所得税率との相殺でそれでも節税効果はあります。
課税所得金額 〜330万円:7.2%
〜695万円:17.2%
源泉徴収20%との差額は還付されます。
課税所得金額が900万円を超える人については、所得税、住民税いずれも申告不要が有利です。
源泉徴収のままでいましょう
選択肢②の申告分離課税を選択するのは、利子所得で説明したとおり譲渡損失が発生していて損益通算や繰越控除をおこなったほうが良い場合です。
株式等を特定口座の源泉徴収ありで保有しているなら、損益通算までやってくれて確定申告不要なんじゃない?
そのとおりですが、以下の注意点があります。
- 一般口座との損益通算はできない
- 他社金融機関の口座との損益通算はできない
同一口座内での損益通算のみなので、複数の証券会社で株式を保有している人が、会社間をまたいで損益通算する場合は確定申告が必要です。
▶︎非上場株式等の場合
上場株式等以外の非上場株式等(中小企業の株式など)は配当受け取り時に20.42%(所得税20%、復興特別所得税0.42%)が源泉徴収されます。
ここで、ん?住民税は?
と思った方、鋭い(笑
非上場株式等の場合、住民税は天引きされません。
特例により、配当金額が少額であるなら(おおよそ年間10万円以下)所得税は源泉徴収のみでその後は申告不要を選択できます。
ただし、住民税は別途申告が必要です。
配当金額が少額特例を超える額なら、総合課税で確定申告が必要になってきます。
いったん20.42%で源泉徴収された上で、総合課税として他の所得金額と合算して税額を計算します。
最後に
▶︎上場株式等をNISA口座で保有している場合
そもそも非課税口座なので申告不要です
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