
火をつけて焚くのではなく、常温で香りのする原料を刻んで調合し、袋などに入れて自然に漂う香りを楽しむお香のことを「匂い香(においこう)」といいます。
平安時代から伝わる伝統的な香りの楽しみ方で、香原料には白檀、丁子、桂皮、龍脳などが用いられます。
匂い袋
「匂い袋(においぶくろ)」とは、巾着などの布袋や紙の袋に「匂い香」を詰めたもので、持ち歩いたり室内に置いたりして香りを楽しむことができます。
香りの持続期間は環境によって変わりますが、小さなものであれば1〜3か月ほど、大きめのものでは数か月程度が目安とされています。
そのあいだ、火を使うことなく、常にほのかにやさしい香りが漂い続けるのが特徴です。
匂い袋の使い方

クローゼットやタンスに入れて衣類にほのかな香りを移す。
また、防虫効果もあります。
バッグやポーチに忍ばせて「香りのお守り」として持ち歩く。


インテリアとして玄関や寝室に置いて、部屋全体に香りを漂わせる。
やや大きめで「室礼向け」あるいは「置き香」とも言います。
贈り物としても手軽に選べ、和の趣を感じさせる匂い香は、ちょっとした心遣いを伝えるのに最適です。

文香
「文香(ふみこう)」とは、和紙や布に「匂い香」を包み、薄型に仕立てた香りのアイテムです。
名刺入れや手紙に忍ばせることで、相手にほのかな香りを届けることができます。
平安時代の貴族が恋文に香を焚きしめていた風習が始まりと云われています。
文香の使い方

手紙に添える:
封を切った瞬間に広がる香りが、文章にぬくもりを加えます。
名刺入れに忍ばせる:
名刺にほのかに移った香りが、ビジネスシーンで上品な印象を与えます。


財布や小物入れに:
普段使いの持ち物に、さりげなく香りを移すこともできます。
匂い袋との違い
匂い袋は中に入っている香原料の香りを、周囲に漂わせるのが主な目的であるのに対し、文香は「香りを移す」ことを目的としたものです。
そのため香りは強すぎず、控えめで上品な余韻を残します。